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2022.09.17
SIGHTS KYOTOが思い描く観光とコワーキングとバーの複合施設のカタチ【Kyoto Startup Homebase】

1階は京都の観光案内所を併設したバー、2階と3階は全席フリーアドレス制のコワーキングスペースになっている観光複合施設SIGHTS KYOTOは、2022年4月に京都随一の観光エリアである東山区宮川町に誕生しました。

観光で京都を訪れた方や起業しビジネスの拡大をめざす方、そして地元の方をつなげる新しいコミュニティの形をつくりながら、観光とビジネスの両方をサポートしています。

今回のインタビューでは、SIGHTS KYOTOの設立経緯や特徴、今後の展望について運営会社である株式会社ニシザワステイの代表取締役西澤 徹生様、専務取締役 西澤 奈月様にお話を伺いました。

 

株式会社ニシザワステイ 専務取締役 西澤奈月さん

 

―SIGHTS KYOTOを設立された経緯について教えてください。

西澤奈月 もともと旅行会社に勤めていまして、6年前に独立し一棟貸しの宿泊施設をオープンしました。東山というすばらしい観光都市を拠点として観光に携わり続けている自負がある一方で、地元の方が全く入れない空間をつくっている現状に「これでいいのだろうか」という迷いも感じていました。

 

起業当初は宿泊施設をさらに増やすことを考えていましたが、同じ観光に携わるなら観光で京都を訪れる方だけではなく地元の方も気軽に使ってもらえる、旅行者と地元の方が自然に交われる、そんな場所をつくりたいと考えたのがSIGHTS KYOTOを設立するきっかけです。

どんなサービスがあると地元の方に利用してもらいやすいかといろいろ考えた結果、コワーキングスペースなら気軽に利用してもらえるのではないかと思いました。

 

今あるコワーキングスペースの多くは、仕事を淡々とするだけの作業場になっていて、思いついたアイデアを伝えたり共有したりする場が少ないのが現状です。

単に人が集まるだけではなく、アイデアを共有しどう広げ実現していくかが大事だと考えているので、その受け皿としてバーをつくり、さまざまな出会いが得られる場の提供をめざしています。

 

―SIGHTS KYOTOの特徴はどういったところでしょうか。

西澤奈月 まずひとつめは、観光複合施設という位置づけです。地元の方、旅行で来られた方どちらも使える空間、今まで交わる機会がなかった両者が交わる場所を観光地でつくりたいと考えていました。

地元にあるものを生かすという視点から、建物は築100年近い町家を改装し、家具などのインテリアもこだわりを持ってひとつひとつ選んでいます。

1階のバーは朝9時から営業していまして、会員さんはもちろん観光客や地元の方など、どなたでもご利用いただけます。

京都市内にある5つの醸造所と契約しているクラフトビールは、お越しいただくたびに違う銘柄を楽しめるようにその都度入れ替えているんですよ。

日本酒も全国各地の銘柄からこだわって選んでいて、ご近所の料理人さんから「こんな珍しいお酒を置いているんだ」と驚かれるようなラインナップです。お酒の紹介から観光の話につながったこともありますね。

 

食事は提供していませんが、近所のいいものをどんどん紹介することで地元に貢献できるので、お客さんのご希望にあわせて出前を取ったり、近所の飲食店を紹介したりしています。

また、お客さん同士で美味しいお店を教え合う光景もよく目にします。

「こんな仕事しています」「じゃあ今度、こんなイベントをしませんか」「こういう仕事をしている人を紹介するよ」といった会話から名刺交換をして、私たちの知らないところで広がっているつながりもあるようですね。

 

ふたつめは、他のコワーキングスペースにはないイベントの開催です。今年7月、コワーキングスペースの会員さんや時々ご利用いただく方で集まって飲んでみようと「コワーキング会員と飲まナイト!」というイベントを初めて開催しました。

普段会員さん同士が顔を合わせることはあまりないのですが、このイベントでどんな会員さんがいるのか知っていただくことで距離感が縮まったと思います。

そのほか、会員さんや地元の方がゲストバーテンダーとしてカウンターの中に立っていただくイベントも企画中です。

気軽に飲みながらキャリアコンサルを受けられる「キャリア酒場」、ご近所の佃煮屋さん自慢のお出汁を使った絶品メニューを堪能できる「出汁酒場」をすでに開催し大好評でした。

 

コワーキングスペースが企画するイベントはセミナー形式が多いですが、私たちの「おもろいほうがええやん」というポリシーに沿ってゆるい感じのイベントを提供できる、カウンターに立つ方の業種業態によっていろいろな内容のイベントができるこの2点はSIGHTS KYOTOならでは。

今後もいろんな方が気軽に参加できるイベントを企画していきたいですね。

 

 

―どのような方が、SIGHTS KYOTOを利用されていらっしゃるでしょうか。

西澤奈月 経営コンサルタント、税理士などの士業、フリーライターなど業種はさまざまです。

近所に住んでいる方、京都を拠点にしてお仕事をされている個人事業主やフリーランスの方、拠点は大阪にあって顧客が京都にいらっしゃる企業さんなどにご利用いただいています。

ドロップインもあるので、東京や東北など全国から出張で京都に来られてご利用いただくケースも多いです。出張で京都に一週間滞在されていて、近くのホテルに宿泊しながらうちで日中お仕事をされるというパターンもありますね。

コワーキングスペースの会員さんは、しっかりお仕事されていながらくだけている気さくな方ばかりです。

私たちは起業当初から、誰に相談するということもなく都度話し合いながらやってきただけに、コワーキングスペースの会員さんたちは私たちにとって「相談できる人がやっとできた」という感覚です。会員さんというより仲間ですね。

 

西澤徹生 コワーキングスペースの利用者は、25~55歳です。バーの利用者は、22歳から70~80代と高齢の方も多いですね。

会員さんの中には、京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)のメンバーや、私が最近まで通っていた京都大学経営管理大学院の卒業生といった方々もいらっしゃって、顔ぶれが豊かですよ。

 

 

―SIGHTS KYOTOの今後の展望について教えてください。

西澤奈月 ベースはあくまでも観光なのですが、観光客が増えて終わりというのではなく、東山で生活する方が増えて、地元の方に喜んでいただける街にしていきたいという思いが強いです。

実は東山区には、住民が減少してきているという問題があります。子どもの同級生が小学校に上がるタイミングで違う地域に引っ越していくケースを通してその問題を身近に感じています。

バーのお客様とお話していると、家や店舗を探しているといったご相談を受けることがあり、自然な流れで物件を紹介できたらという思いから不動産事業も始めました。

地蔵盆など代々伝わる行事がある地域ですが、東山区は仕事も育児もしやすい場所ですから、ワーケーションや移住にもおすすめしたいと思っています。

 

観光の町から一歩踏み出して、東山区全体のまちづくりをしていきたいので、人が集まる拠点としてバーやコワーキングスペースの運営を行いながら東山区の魅力をアピールしたいです。

興味を持ってくださった方が集まって仲間が増えればどんどん新しいビジネスが生まれますし、ワーケーションや移住の候補地にしてもらいやすくなりますから。

 

西澤徹生 SIGHTS KYOTOに人を集めて終わりではなく、集まった方たちの持つ力を外に放出して生かしていくことを見据えながら動いていくことを常に意識しています。

祇園や東山エリアは、バルセロナやヴェネツィアと並ぶ世界有数の観光エリアだと感じています。

しかしいろんな意味で、世界的な観光都市になるにはまず地域のいろんな属性の人を増やし、さらにひとつにまとまらなければなりません。

従来のように社員を増やしていく組織づくりから、ゆるいつながりでも街を盛り上げたいという意識を共有した仲間を増やしていく、そんな風に組織づくりの考え方そのものを変えていくことも必要でしょう。

 

今は外に出ていくよりも、コワーキングスペースの会員さんやバーの利用者を増やして人を集める段階です。

大きく羽ばたくことを前提に、ある程度人が集まったらどうするか、何ができるかということを常に考えて準備しながら、飛び立つ瞬間を待っているというところでしょうか。

SIGHTS KYOTOを拠点として、「東山エリアを世界一の観光都市にしていこうよ」という思いのもと、今までまとまりきれなかった人たちをまとめつつ、宮川町、次に祇園や清水、そして東山区全体、京都市と集まってくれた方たちのパワーを同心円状に広げていけたらうれしいですね。

 

そして働き方やライフスタイル自体を従来の価値観から変化させ前進させていきたいというのも長期的な展望のひとつなので、いろんな方と協力して進めていく過程としてホテルや旅館などの宿泊施設にあるような横のつながりができていくといいなと思っています。

例えば、京都市内の企業に対して、SIGHTS KYOTOを含めた数か所のコワーキングスペースと法人契約を結びサテライトオフィスとして利用していただく提案を行うなど、他のコワーキングスペースと連携していくこともゆくゆくは考えたいですね。

 

 

―SIGHTS KYOTOが立地する宮川町や東山エリアの魅力について教えてください。

西澤奈月 宮川町はお茶屋さんに囲まれ、地元の方でも観光地に来たような気持ちになるエリアということもあって、コワーキングスペースというビジネスに関するサービスを提供しているのは現時点では私たちだけです。

しかし京阪電鉄祇園四条駅から徒歩で約1分、阪急電鉄京都河原町駅から徒歩で約5分とアクセスがいいので、京都市内の方はもちろん市外の方でもご利用いただきやすい立地ではないかと思っています。

仕事が終わった後や仕事中の休憩時に、寺社を観に行かれる方も多いですね。出張で京都に来られて仕事をしつつ観光も気軽に楽しんでいただけるというのは大きな魅力だと思います。

 

―SIGHTS KYOTOを利用される方は、どのようなご感想をお持ちでしょうか。

西澤徹生 従来の経済的価値だけではなく、社会的価値も求めていく活動に共感し関心を持っていることもあって、幅広い意見が集まるよう利用者の年代は絞っていませんが利用者の質にはこだわっています。

会員さんから「質がよく意識の高い利用者が集まっている」と評価していただいていることが、とても励みになっていますね。

 

【提供元】
https://startuphomebase.kyoto/

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