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2023.05.21
千年以上の歴史を誇る小丸屋住井…受け継がれるのはうちわづくりの技術だけでなく、日本の精神【神田が行く!】

どうも、奈月です☽

本日は、大好評『神田が行く!』第十回!

 

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『神田が行く!』とは・・
SIGHTS KYOTOのマネージャーかんちゃんが、SIGHTSに関わる京都の方や企業さんを訪れて実際に体験し、お話を伺うことで”理解を深めよう!”という企画です。
SIGHTS KYOTOのバーや物販では、京都の素晴らしい商品を使わせていただいています。ですが!まずはSIGHTSの顔であるかんちゃんが勉強しないことには、お客様にもその魅力をしっかりお伝えできません。。
だから神田は行くんです!どこまででも!
時には京都の外にまで出て行ってしまうかも…?
体験者かんちゃん、ライター奈月、ボイスレコーダー西澤の3名体制でお送りします!

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京都で暮らしているとよく見かける、芸妓さんや舞妓さんの名前の入った赤と白のデザインのうちわ

そして、京都の春の風物詩でもある「北野をどり」「都をどり」「京をどり」「鴨川をどり」「祇園をどり」を彩る華やかな舞扇子舞台小道具。

どれも京都ならではの光景ですが、つくっていらっしゃるのは1,000年以上の歴史を誇る「小丸屋 住井」さん。
今回は、10代目女将代表取締役住井啓子さんにインタビューをさせていただきました!

うちわについてだけでなく、住井さんのチャーミングで朗らかなお人柄、そして京都で代々受け継がれているものの本質が垣間見える時間の始まり始まりです。

 

モノもすべて、重要なのは人間性

かんちゃん 「私はこれまで伝統工芸文化に関わる機会がほとんどなく、そういった歴史あるものを残していかなければ…という意識も恥ずかしながら薄かったんです。それが昨年、福井県越前市で和紙や箪笥(たんす)など伝統工芸の現場を訪れ、実際に体験したり同世代の若い方が職人さんとして頑張っていらっしゃるのを見たりして、考えが変わりました。住井さんは私たちのような若い世代に対し、伝統や文化というものをどのように発信し、伝えていこうと考えていらっしゃいますか?」

住井さん 「伝統も文化も、とにかく大事なのは人なんですよ。人が宝。若い方は先を進んでいることや新しいものに憧れの気持ちがあると思いますし、伝統工芸のようなコツコツやる仕事に対して、若いみなさんが魅力を感じてくれるのかなぁ…とも思います。私どもは舞台の小道具も担当しておりますので、この仕事にどんな喜びがあるのかを伝えてあげたいという想いで社員には舞台踊りの会を見せる機会をつくっています。だけどやっぱり人を育てていく、というのはすごく難しいですよ。…よかったらいま募集しておりますので、ぜひ。(笑)」

かんちゃん 「人の重要性…私たちもそれを日々感じています。私はモノそのものよりもその奥にいる人に対して、より興味を持つタイプなんです。この【神田が行く!】という企画でも、実際に人に会ってお話を伺い、その方の想いを聞かせていただく中に大切な言葉がたくさん散りばめられているなぁと毎回思うんです。商品を見せていただくだけでは分からないところまで見えますね。」

住井さん 「そのお店の商品には、それぞれそのお店のカラーがありますよね。カラーというのは、先祖からの脈々とした歴史、そしてその人の想いや考え方。そういったものが商品には入っています。一番大事なのは、やっぱり人間性なんですよ。」

かんちゃん 「なるほど…深い。」

住井さん 「文化として守られてきたことを、まだこの先もみんなで守っていく。日本の本物、歴史あるものをきちんと次の世代にも伝えていかないといけないし、それには柱が必要です。日本の精神が入ったものを、日本人が価値をしっかり感じて買う。そういう流れをつくらないといけないと思います。」

かんちゃん 「本物をしっかり守って、後世に残していく…。ほんとうに大変なことだと思います。」

住井さん 「自分たちが軸をしっかり持ちつづけることが大切だと思います。7、8年前やったかな…『京丸うちわのモノが悪い。』とお叱りのお電話をいただいたことがあったんです。とにかく謝って、『うちで貼り直しさせもらいますので、着払いで送り返してください。』とお伝えしたんですよ。そして電話を切る前に『持ち手のところに“住井製”と書いてありますよね?』と伺ったら、『電話番号も住所もなにも書いていない。“京丸うちわ”で調べたら、ここが大元やと分かったから連絡した。』と言われて、うちの商品ではないということが分かったんです。『京丸うちわの商標はとってへんのか?』と聞かれて『いえ、とっています。』と答えると、『老舗なんだから、商標とっているならみんなにちゃんと知らせなあかんで。』と。そう言っていただいたのをキッカケに、お付き合いのあるうちわ屋さん1軒1軒にお電話させていただきました。」

かんちゃん 「住井さん自らお電話されたのですか?」

住井さん 「そうです。1軒1軒お電話してお話させてもらうと、『そら住井さんのものが1番ええんやから。』と気持ちよく聞いてくれはりました。それまでは知らなかったんですが、よそのホームページやオンラインショップを見てみると、うちが作ったうちわを自分のところの商品として販売されていた…という現状も分かったんです。あの苦情があったおかげで気づかせていただきました。」

かんちゃん 「住井さんって、ものすごく物腰柔らかくて気遣いの方なんですね。ピンチをチャンスに捉える考え方…そして日本の、京都の本物を守るための行動…素晴らしいと思います。」

住井さん 「小丸屋の歴史が変わってしまう、途絶えてしまう…それを止めるために商標登録をとったんです。日本の、京都の文化を守る責任が私たちにはありますし、そのためにはお客様にも本物を知っていただかないといけないと思っています。」

かんちゃん 「各業界でコロナ禍は厳しい数年間を過ごされたというお話を伺いますが…小丸屋さんもしんどい時期が続きましたか?」

住井さん 「もちろんです。私たちは舞台の小道具を担当していますから、コロナで舞台がゼロになるとその間はずっとマイナスでした。そこからまた銀行から借りられるだけ借りて…という状況。コロナで業界からも人がどんどんいなくなるし大変でした。芸舞妓さんのお稽古もできなくなり、ご高齢のお師匠さんたちも外に出なくなったことで気力も体力も弱くなられましたし…。以前からよく、京都のいろんな職人さんの相談に乗っていたんですが、特にコロナ禍では実際に職人さんのところまで行って、そのときの現状を聞いて回ったんです。なんとか助けられないか…という想いで、たとえば舞扇子の骨を使った新しい商品を提案しました。“京もの”を守るために、努力してアイデアを出していかないと、と思っています。」

かんちゃん 「アイデアを生み出すために、常にアンテナを張っていらっしゃるのですか?」

住井さん 「常にお客様から気に入って頂ける商品作り、また若い方にも喜んで頂けるものは何か、今の小丸屋に出来ることは何か、を考えています。文化として守っていかないといけない…。今の職人さんを守れても、後を継いでいく人がいないと続かないから、まだまだ課題は山積みです。」

 

目には見えない”感覚”をとる

かんちゃん 「一貫して”人間性”というワードが出てきますが、住井さんの人間性がまず素晴らしいです…。」

住井さん 「私ね、子どものときからのことを本当によく覚えているんですよ。嫁姑関係や夫婦喧嘩を間に立って子どもながらに見たり、両方の意見を聞いたりしていて、自分だったらこうしよう、ああしようと判断していくのも勉強になりました。子どもの頃の苦労は人間性を高めていくことにつながるから、それを負に思わずプラスに捉えると肥しになります。」

かんちゃん 「なるほど…。小さい頃に感じたことをご自身の子育てにも反映されていたんですね。」

住井さん 「そうやね。甘やかすことがいいと私は思わないし、”していいこと”と”悪いこと”はきっちり教えないと。子どもが小さい頃、お風呂に入りながら息子や娘に般若心経を教えていたんです。先祖供養のこと、それをきちっとしていたら良い縁がまわってくるんです。そのおかげか、息子も”感覚をとる”子でね。『あの場所のあの部分、あんまり良くないわ。』って言うたら、『わかってる。自分もそこ避けて通ってるよ。』と言われたんです。悪いDNAも供養することで良い方向にいくし、軸がブレていなかったらいろんな良い人が自然と集まってきてくれますよね。」

西澤 「住井さんのお話を伺っていると、住井さんご自身が感覚をとるのに長けていらっしゃるなぁと感じます。僕も””をすごく大事にしているんですけど、どうすれば自分より若い世代の子たちのその部分を伸ばしてあげられるのか…と悩むことがあります。」

住井さん 「人の縁とかに”自分が”は必要ないんです。自分の力ではない、ということ。引っ張ってくれるのは目に見えない力が大きいんです。変な話じゃなくてね。大事なのはそれに気づいているか気づいていないか。気づいていない若者たちがいたら、それにどう気づかせてあげるか。それは私も考えていますね。たとえば同じ苦労を一緒に解決してきた、長く一緒にいる社員は家族のようで、そのぶん絆も深まります。だけど、どの社員にも全員に伝えていきたいから、やっぱりそれぞれとコミュニケーションをとる時間をもっととっていきたいなと思います。」

 

あたりまえのように思わず、自分で気づいていかないと

住井さん 「こうして今回ここへ来ていただいてありがたいです。私たちも、やっぱりみなさんに発信していかないといけないと思います。京都の京丸うちわ、この丈夫なほんまもんのうちわを持ちましょう、と。100円、200円で買ったうちわを毎年捨てるとそれもゴミになってしまいます。今よく言われている“SDGs”なんて、実は昔からある考えであたりまえのことやったんです。ゴミは家庭で燃やしたり土に埋めたり…と知恵があったんだけど、それを合理化してしまってあたりまえのようにゴミを捨ててもらっているでしょう。掃除機がないときは茶かすを撒いて、ほうきで掃いていたんですよ。そういうところにもう一度立ち戻って意識しましょう。みんなそれぞれがちょっとした心を持つことで、クリアできると思います。」

かんちゃん 「日本のモノへ対する価値を、日本人こそがもっと感じるべきですね。」

西澤 「住井さんとお話をさせていただいていると、サービスを提供する側の気遣い気配り愛情、というものの大切さを改めて感じます。」

住井さん 「自分で気づいていかないとね。サービスの向上もお客様の立場に立って見ると気付くことが多いと思います。とても大事なことです。」

西澤 「結局は観光も””が大事なんじゃないかな。どれだけモノが良くても、場所が良くても、そこに気が入っていないと価値がない。気を入れるのは、やっぱりですよね。それを感じられる人が少ないのは、まだまだ課題だと感じます。」

かんちゃん 「私たちのSIGHTS KYOTOは気のいい空間にしたい、と常々思っています。それに気づいて、そこを気に入ってくださった方が自然と集まってくれているなと感じますね。」

住井さん 「そういう新しい時代の担い手として、ぜひみなさんには頑張ってほしいです。よろしくね!」

かんちゃん 「そんな、そんな!恐れ多いです…が、頑張ります!」

 

なんと今回の「神田が行く!」に合わせて、SIGHTS KYOTOの名入り京丸うちわを製作してくださっていました!
手描きならではの文字のあたたかみ…眺めていると愛着が湧いてきて『すでに愛おしい…』と感動していた我々。

最後に、かんちゃんに感想を聞いてみましょう。

『今回はとても素敵なご縁で小丸屋 住井の住井啓子さんにインタビューをさせていただきました!

私たちの会社は「持続可能な観光を実現する」というビジョンの元で日々活動をしていますが、そんな環境で働く私にとって今回伺ったお話は、どんなことでも持続をさせる、継承していくということの難しさや面白さをとても感じるものでした。
人を何より大切にしている弊社ですが、こうして京都で長い歴史のある小丸屋の代表である住井さんの「伝統も文化も人」という言葉はめちゃくちゃ心に響きましたし、私たちが大切にしていることは間違っていないんだと気づかせていただく機会にもなりました。

相手の気持ちに寄り添い、相手の立場で考える。お客様のために常に最善の行動をされている住井さんは、京都のおもてなしの心を体現されているようなお人柄で本当に素晴らしいです。その心を私たちのような若い世代にも浸透させていきたいと思いますし、そのために私も日々頑張ろう!と刺激をいただきました。

ちなみに小丸屋さんに作っていただいた団扇はSIGHTSの店内にありますので、いつでも見に来てくださいね☆

住井さん、今回は本当にありがとうございましたー!』

 

小丸屋 住井
https://komaruya.kyoto.jp/

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